蓬莱当主、地元老舗料亭旅館「八ツ三館」へ 日本酒と料理の酒談義
2021.1.21
今号のインタビューコーナーは、渡辺酒造店当主・渡辺久憲氏が酒蔵を飛び出し、飛騨市内にある国登録有形文化財の料亭旅館八ツ三館へ。創業安政年間。四季それぞれ山海の幸を活かしたお料理で飛騨人と飛騨を訪れる方々を喜ばせてきた「八ツ三館」の総料理長・秋田直樹さんを訪ね、料理と日本酒談義。お料理を作る立場からのお話を伺いました。
渡辺当主(以下渡辺):日本酒『蓬莱』への率直な感想をお聞かせ下さい。
秋田総料理長(以下秋田):決してお世辞ではなく、すっきりとした中にもコクがあり、お米本来の味がしっかりと感じられる美味しいお酒、日本酒らしい日本酒だと思います。
渡辺:ありがとうございます。では、料理を作られる上で気をつけてみえる部分はありますか?
秋田:あまり香辛料を使わないということです。素材本来の味を引き出すためという側面があるのはもちろんですが、お酒を嗜む方にとって、繊細である日本酒の味を邪魔してしまっては本末転倒です。日本酒を引きたてながらも、飛騨ならではの味を楽しんで頂けるように工夫をしています。ただ飛騨は山間地で昔から味付けが濃いので、そのバランスが難しいですね。ちなみに当館の川魚料理、特製の飛騨牛ローストビーフと蓬莱のマリアージュは絶品ですよ。
渡辺:ローストビーフですね。次に訪れる際の楽しみが増えました。しかしひと昔前に日本酒とローストビーフを合わせるという発想はあまりなかったように思いますよね。料理人の方々のご努力あってだとは思いますが、日本酒業界もかなり変わったと感じます。
秋田:変わったと言えば、当館のお客様ですが本当に外国のお客様が増えました。しかも日本酒を好んでお飲みになります。ひと昔には想像しなかった光景です。私の料理も進化をし続けないといけないと身が引き締まる思いです。
渡辺:外国人の方を意識した中で料理とお酒の関係を見ると、金額面・重要度として欧米では、料理とお酒が5対5と言われ、日本では料理8、お酒2と言われています。日本酒業界としてまだ努力の余地があると考えています。お互い業界は違えど『食』でお客様を幸せにするという事では同じだと思います。日本国内のみならず外国のお客様にも、更に満足いただけるよう、ともに努力しましょう。本日はありがとうございました。