2021.10.14
「日本酒がワインを超える日」出版記念特別コラム【渡辺酒造店】
【書籍には書けなかった話#1】
ありがとうパワー貯蔵
渡辺酒造店の酒蔵のタンクにはびっしりと見学した方のメッセージが書かれていて、「ありがとう」のパワーを貯蔵しています。
2007年に「水からの伝言」という一冊の本に出会いました。
著者である江本勝氏の研究によると、「水は言葉を理解する。なぜならば、水を凍らせてできる氷の結晶を見ると、ありがとうの文字を見せながら保存した水は、きれいな結晶が、ばかやろうという文字を見せた水からは、きたない結晶ができた」というのです。
この本を読んで、「なるほど!日本酒は水と米が主原料で、成分の80%近くが水でできている。水が言葉を理解するのならば、日本酒も同様だろう」と考えたのです。
そこで早速実験を始めてみました。常温保存で比較的品質が劣化しやすい生酒を3本用意しました。1本目は「ありがとう」と書いたラベルを貼り、2本目には「ばかやろう」と書いたラベルを貼りました。3本目はラベルを貼りません。そうやって3本を棚に並べて毎日朝と晩に語り掛けたのです。
1本目は心から「ありがとう」と話しかけ、2本目は「ばかやろう」と心から罵倒し、30日間続けました。
1ヶ月後、いよいよ3本のお酒のきき酒です。「ありがとう」ラベルのお酒は、みずみずしくフルーティーな味わい。まったく劣化せずにむしろ熟成を経てまろやかな美味しいお酒になっていました。「ばかやろう」ラベルのお酒は、果実香は消失し、味わいも鈍重なものに変質していました。さらに驚いたのは、3本目のお酒です。うっすらと白濁し、酸っぱい味わいになっていたのです。これは明らかに腐敗です。ラベルを貼らず声をかけることなく30日間無視しつづけた結果がこれです。
「愛」の反対語は「無関心」とはマザーテレサの言葉です。喧嘩するならまだまし、無関心こそ相手を傷つけるということなんですね。これはお酒だけでなく夫婦関係こそ気を付けなければ、と大いなる学びを得た実験でした(笑)
この実験成果を「お酒の貯蔵タンクに応用しよう!」ということで始まったのが、ありがとうパワー貯蔵です。酒蔵を見学してくださった方に「ありがとう」や「美味しい」などのポジティブなメッセージを書いてもらっています。書いてくださったお客さんは、みんなニコニコ笑顔になります。その笑顔をみた私たちも嬉しくてニコニコ笑顔になります。
思えば、ありがとうパワー貯蔵を始めた年から経営が黒字になり、以来17年間増収増益なのです。これもありがとうパワーのおかげなのですね。ありがとう。
有限会社 渡辺酒造店 荒城屋九代目
渡邉 久憲