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2022.5.10

「ひやおろし」とは?
秋限定の日本酒「ひやおろし」について解説!【渡辺酒造店】

紅葉と青空

目次

1.秋の日本酒「ひやおろし」について
 (1)ひやおろしの由来
 (2)ひやおろしと秋上がりについて
 (3)ひやおろしの特徴 
 (4)出荷時期により3種類に分けられる

2.「ひやおろし」のおすすめの飲み方・保存方法
 (1)すっきり飲むなら冷酒や常温で
 (2)風味やコクを楽しむならお燗で
 (3)ひやおろしの保存方法

3.渡辺酒造店人気の「ひやおろし」

4.最後に

 

囲炉裏と鮎の塩焼き

 

「ひやおろし」とは? 秋限定の日本酒「ひやおろし」について解説!

1.秋の日本酒「ひやおろし」について

(1)ひやおろしの由来

   ひやおろしが誕生したのは、今から遡ること300~400年前の江戸時代のことでした。
が到来する9月頃から、貯蔵室の温度と外気温が等しくなってきます。
その時期に商品を
出荷するのですが、日本酒で常温を意味する「冷や」の状態「卸す」ことから、
「ひやおろし」
と呼ばれるようになったと言われています。
現在では冷蔵・冷凍の技術が向上したため、火入れを行わない生酒なども気軽に楽しめるようになりましたが、
一度だけ火入れした「ひやおろし」は、江戸時代からの秋の風物詩と
して親しまれており、日本の伝統、文化の一つとなっております。

 

(2)ひやおろしと秋あがりについて

 「秋あがり」というのは厳密に言うと、お酒の種類のことではなく、お酒の状態を指す言葉になります。
冬から春にかけて搾ったお酒を夏の間熟成させ、秋にかけて旨味が増した状
態のことを「秋あがり」と呼びます。
反対に熟成がうまくいかず美味しいお酒にならなかった
ものは「秋落ち」や「秋さがり」と呼ばれるようです。
 日本酒を飲む方であれば、この「秋あがり」という名前を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
「秋あがり」という言葉は場面によっては、ひやおろしと同義語で使われる
こともありますが、微妙にニュアンスが違ってきます。
ぜひ、両者の違いを覚えて、日本酒
通になりましょう!

鰻とおちょこ

(3)ひやおろしの特徴

 日本酒の「ひやおろし」の特徴は、火入れを一度だけ行ってから貯蔵したお酒のことです。
基本的に、日本酒は醸造されて、冬から春に絞られたあと、味や風味の劣化を防ぐために二度の「火入れ」と呼ばれる加熱処理を行います。
ひやおろしは二度目の火入れを行
わず、一回だけとなります。
ちなみに、「生酒」と呼ばれるものは、絞られた状態のまま、一
度も火入れを行わずに卸された日本酒のことを言います。
 冬に絞ったまま卸した「生酒」や新酒がフレッシュな味わいであるのに対し、「ひやおろし」は一度火入れを加えた後に、
貯蔵庫で夏の期間寝かせるため、程よく熟成されています。

香りも落ち着いており、味わいのカドが取れ、まろやかな丸みを帯びているのが特徴です。
味わいにまとまりが出て、味わいの深さや厚みを楽しめるのが、日本酒の「ひやおろし」の特徴となります。

 しっかりとした旨味が感じられる「ひやおろし」は、特に滋味深いきのこ料理や、旨味が溶け合った鍋料理との相性が抜群です。
豊富な食材が揃う秋の食卓を彩最高の組み合わせ
と言えます。
ひと口に「ひやおろし」と言っても、夏を過ぎてすぐ出荷されたものと、晩秋を迎
えてから出荷されたものとでは、
時期による熟成度合が変化し、味わいが変わるのが特徴
となります。
時期による違いは、次の項目でご説明します。

 

(4)出荷時期により3種類に分けられる

 出荷される時期により、ひやおろしは大きく3種類に分けられます。早い時期ですと、8月末から出荷が始まり、
大体9月から11月頃にかけてひやおろしの商品が市場に出回りま
す。人気の銘柄では予約だけで完売することもあり、
日本酒好きな方にとって「ひやおろし」
は、待ちに待った商品であると言えるでしょう。
 出荷時期によって味わいが変わる点に「ひやおろし」の魅力があります。
同じひやおろし
でも、9月は「夏越し(なごし)酒」、10月は「秋出し一番酒」、11月は「晩秋旨酒(ばんしゅうあまざけ)」と呼び名が変わります。
その味わいも少しずつ変化していくため、同じ銘柄でもそれぞれの時期ごとに楽しめるでしょう。

紅葉の風景

 

  ~9月出荷「夏越し(なごし)酒」~

 夏の間熟成させた後、卸したひやおろしは、「夏越し酒」と呼ばれます。まろやかさを持ちつつ、
夏酒らしいフレッシュ感の残る爽快な味わいが特徴となります。冷酒、常温、みぞれ
酒などの飲み方で飲むのがおすすめです。
 日本酒と合わせるお料理としては、豆腐や漬物などさっぱりとした料理がよく合います。
一方では、みぞれ酒と温かい料理を合わせるのも日本酒通ならではの楽しみ方になります。
秋に採れるさんまの塩焼きをつつきながら、晩酌のお供として嗜むのもおすすめです。

囲炉裏と鮎の塩焼き さんまの塩焼き
  

  ~10月出荷「秋出し一番酒」~

  金木製の香りが立ち込め、秋の深まりを感じる10月頃になると、ひやおろしもさらに熟成を深め、まろやかさや芳醇な味わいを楽しめるようになります。
 秋出し一番酒は時期で分けた3種類のひやおろしの中でも一番、味のノリや香りのバランスが良い点が特徴となります。
中秋の名月を見ながら、秋出し一番酒を飲んでみてはいか
がでしょうか?
 秋出し一番酒に最もおすすめしたい飲み方は、40度程度の「ぬる燗」よりも少し温度を下げた、約35度に温めた「人肌燗」です。
少し温めることにより、甘味や香りが引き立ち、秋の
味覚ともよく合います。

ひやおろしときのこ 鰹のたたき

 

      ~11月出荷「晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)」~

 気温がぐっと下がり始め、寒さも本格化する11月には、ひやおろしの味わいも「完熟」の域に達します。
11月の時期に出荷されるひやおろしは、熟れた豊かな味わいで「晩秋旨
酒」とも呼ばれます。
 おすすめの飲み方はぬる燗や熱燗で、熱々の鍋を囲みながら合わせて飲むのがおすすめです。
また、しっかりとした味わいのジビエや濃厚なチーズなどのおつまみにもよく合い
ます。

イノシシ鍋 ジビエ

 

2.「ひやおろし」のおすすめの飲み方

(1)すっきり飲むなら冷酒や常温で
 ひやおろしの爽やかで繊細な味を楽しみたい方は、よく冷やした冷酒や常温で飲むのがおすすめです。
グラスに氷を入れて、ひやおろしを注いだオン・ザ・ロックでも美味しくいた
だけます。
特に、辛口のひやおろしを飲むのがオススメです。冷やして飲むことで、スッキリ
とした口あたりと繊細な味わいを楽しめます。

(2)風味やコクを楽しむならお燗で
 ひと夏をかけて熟成されたひやおろしの豊かな風味やコクを楽しみたい方には、お燗がおすすめです。
温度帯は40度程の「ぬる燗」や50度前後の「熱燗」がおすすめです。
燗酒
にすることにより、ひやおろしの旨味を存分に味わえるでしょう。
 秋は、気温の上がり下がりが激しい時期ですので、その日の湿度や気温に合わせて冷酒にするか、お燗にするか選ぶのも日本酒の醍醐味です。

(3)ひやおろしの保存方法について
 ひやおろしは出荷するまでに火入れを一度しか行わないため、保管状況によっては通常の日本酒に比べて変質や劣化が起こりやすい傾向にあります。 
火入れを一度も行わない生酒と同じように、ひやおろしのお酒も低温で光が当たらない場所で保管するようにしましょう。
開封後の保管場所としては、冷蔵庫がおすすめです。
度、栓を空けたら、風味を損なわないようになるべく早く飲み切ることをおすすめします。

 

 3.渡辺酒造店人気の「ひやおろし」

蓬莱 ひやおろし 蔵元鑑査 無濾過原酒

「土蔵の中で夏を越した秘蔵原酒。秋風とともに目覚めました。
蜜のような濃密なトロミを堪能してください」

 熟成により様々な変化をみせる日本酒。その中でも愛飲家のみなさまに古くから愛されているのが、この「ひやおろし」です。
厳寒の季節に造られた酒は一度火入れされたあと、暑い夏の間をひんやりとした土蔵庫の中で眠り熟成を深めます。
やがて秋風が吹きはじめ、蔵の中と外の温度が同じくらいになってきたら、いよいよ目覚めの時です。
その昔、「冷や」のまま貯蔵用の大桶から木桶におろして出荷されたことから「ひやおろし」と呼ばれ、日本酒がもっとも美味しい秋の酒として珍重されてきました。

新酒にはない穏やかで落ち着いた香りと上品な柔らかさ、無ろ過原酒ならではの熟成したまろやかな味わいが特徴です。
脂ののったサンマやキノコなど、旬の味覚とともに、深まりゆく秋の夜をお楽しみください。

原料米:飛騨ほまれ 普通酒
精米歩合:68%
アルコール分:19%
日本酒度:-2

蔵元鑑査 ひやおろし

ーおすすめの飲み方ー
すっきりとした味わいを楽しみたいときは、冷やして飲むのがおすすめ。
また常温では穏やかな香りと柔らかいコクを感じます。お燗するなら、熱燗ではなく、ぬるめにつけるのがコツ。
重厚な旨みがふくらみ豊かな味わいをお楽しみいただけます。

 

蓬莱 自然発酵蔵 ひやおろし 特別純米

飛騨と白川郷の境にある「飛騨最後の秘境」というわれる天生峠。
五〇〇年もの歳月を経て湧き出る『天生水』には、数々の言い伝えがあり、中でも時の修行僧がこの水を飲み、水浴したことで万病をいやす神通力を得たのだとか。
その力によって極めて旺盛な発酵力をもったお酒になりました。この酒がもたらしてくれる恵みには、私たちの想像をはるかに超える何かが感じられます。

原料米:飛騨ほまれ 特別純米酒
精米歩合:55%
アルコール分:15.5%
日本酒度:3

自然発酵蔵 ひやおろし

ーおすすめの飲み方ー
まだまだ暑い夜長に、冷やしてすっきり召し上がっていただくのもおすすめ。
少し肌寒くなってくる日には、人肌くらいにあたためた、ぬる燗が心と身体に沁みわたります。

 

 4.最後に

皆様、いかがでしたか? 秋までじっくりと熟成させたからこそ味わえる、芳醇で深みのある味わい。
毎年この季節を楽しみに待っている、ひやおろしファンの方も多くいらっしゃいます。
 新酒や生酒のフレッシュ感のあるお酒とはまた違った、ゆっくりと季節の移り変わりを感じながら堪能していただきたい、ひやおろしならではの独特の世界。
ぜひお月見や読書に更ける、秋の夜長のお供に。美味しい食材が溢れる、食欲の秋の食卓に。
 今年は、ひやおろしの魅力にどっぷり浸かった秋をお楽しみください!

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