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2023.9.27

『燗酒』とは?『熱燗』と何が違う?燗酒の歴史から温度別の名称と味わいを解説【渡辺酒造店】

   目次

         
   1.はじめに

     2.燗酒(かんざけ)とは?

   3.飛騨特有の燗酒の歴史

         4.燗酒の温度帯と名前

   5.燗の付け方

         6.燗酒におすすめのお酒

   7.まとめ

 

 

1.はじめに

日本酒を温める飲み方、燗酒(かんざけ)。

熱燗と呼ばれる飲み方が有名ですね。
寒い冬の季節に飲まれることが多く、居酒屋や家庭にも広まっている飲み方なので、日本酒を飲まない方でも名前だけは知っているという方も多いのではないでしょうか。

熱燗は日本酒を50℃まで温めた飲み方ですが、他の温度になると呼び方が変わり、細かな温度で味わいも変化することはご存じですか?

この記事では、飛騨特有の熱燗の歴史から温度帯別の種類、さらに燗酒におすすめの日本酒まで詳しくご説明いたします。

 

2.燗酒(かんざけ)とは?

燗酒とは、より美味しく飲めるように温めたお酒のことを言い、一般的には湯煎した日本酒を指します。
日本酒を温めることによって、常温や冷やでは感じにくい繊細な味わいと香りが引き立つため、日本酒の旨みやコクなどの個性を堪能できることが燗酒の魅力です。

特に「熱燗」は冬の風物詩として一般的に知られている飲み方の1つ。
寒い季節に熱燗を飲むと体が芯から温まり、心地の良い時間を過ごすことができます。

3.飛騨特有の燗酒の歴史

飛騨では寒冷な気候から、酒を飲むといえば「熱燗」という文化が根付いています。
たとえ夏であっても熱燗が好まれるのが飛騨。
居酒屋で日本酒を頼んで、何も言わなければ熱燗が出てくるほど根付いています。

とっくりの首までアツアツにしたとびきり熱い燗も地元では好まれており、飛騨古川では「真宗寺、真宗寺燗(しんしゅうじ、しんしゅうじかん)」と呼ばれます。

 

温度はだいたい55℃~65℃くらい。
古川町では「チンしょうじで」と呼ばれることも。
(熱いという意味の「チンチン」の「チン」と、真宗寺を地元の人は「しんしょうじ」とも呼ぶことから)。
これは古川町内にある真宗寺の数代前のご住職が、素手で持てないほど熱いお酒が好きだったことに由来します。

4.燗酒の温度帯と名前

名前 温度 味わい
日向燗 30℃ 酸味旨味の輪郭がはっきりと出始める。
温かくも冷たくもない、なめらかな味わいに。
人肌燗 35℃ 米や米麹の香りが引き立ち、柔らかな味わいが楽しめる。
燗の中で一番優しさを感じる温度帯。
ぬる燗 40℃ お酒の旨味にふくらみが生まれ、豊かな香りが感じられる。
純米系におすすめ。
上燗 45℃ 湯気と共に立ち昇る香りと、後味のキレが楽しめる。
本醸造系におすすめ。
熱燗 50℃ 香り、味ともにシャープになり、キレのいい味わいに。
寒い日に最適。
飛び切り燗 55℃ 酸味や辛さがより強く感じられる。
端麗辛口や生酛系におすすめ。
真宗寺燗 55~65℃ より辛口に味わいが大きく変化し、いつもの燗酒とは一味違う美味しさ。
普通酒におすすめ。

5.燗酒の付け方

お酒を温めて燗酒にすることを、「燗を付ける」と言います。
実際に燗を付けてみましょう。

おすすめの燗付けは「湯せん燗」。
徳利などの酒器に酒を入れ、鍋に水やお湯を入れて温める方法です。

 

  1. 徳利に日本酒を注ぎます。入れ過ぎるとこぼれてしまうので、八分目くらいを目安にしてください。
  2. 水を張った鍋に先程の徳利を入れ、徳利の肩まで浸かるように水の量を調整します。
  3. 徳利を一旦取り出し、鍋に火をかけます。鍋の水が沸騰したら火を止めましょう。
  4. 火を止めた鍋に徳利を入れ、浸します。浸す時間によって、燗酒の温度を調整できます。
【ぬる燗】2分半ほど

【熱燗】3分ほど

※鍋や徳利の大きさ、素材の違いによってこの時間は変わってきますので、あくまで目安としてつける時間は微調整してください。

 

ワンポイントアドバイス

温度を計るには調理用の温度計が最適ですが、それ以外にも方法はあります。
ひとつは、鍋から引きあげた徳利の底を触ってみる方法です。
徳利の底に指がふれられて、やや熱いと感じるくらいであれば、45~50度の上燗に仕上がっています。

湯煎のポイントは、温度の管理です。火をつけたまま湯煎をする場合、ある一定の温度を超えると一気に日本酒の温度が上がってしまいます。
これを防ぐためには、鍋のお湯が沸騰したらすぐに火を止めることが大切です。

電子レンジでおいしいお燗をつけるコツ

湯煎以外でより手軽で温度管理も楽なのが電子レンジで温める方法です。

お燗の目安は、1合(180ml)徳利の場合、
あつ燗なら約60秒、ぬる燗なら約50秒をおすすめします。
(電子レンジ500Wで常温のお酒を温める場合)

手軽な電子レンジでの燗酒ですが、注意したいのは温度のムラです。
電子レンジはその構造上、徳利の上部と下部とで温度差が出てきてしまいがちです。
この温度ムラを防ぐためには、マドラーかアルミホイルを使いましょう。

燗酒が出来上がったら電子レンジから出し、飲む前にマドラーで徳利内をひとかきすることで、徳利内の温度ムラが解消されます。

また、徳利の上から3分の1程をアルミホイルで包むことによって、徳利の中の日本酒全体をムラなく温めることができます。
ただ、電子レンジの機種によってはアルミホイルが使えない場合もありますので、注意してくださいね。

6.燗酒におすすめのお酒

ここでは、燗酒に合う弊社のお酒を温度別で紹介します。

 

蓬莱 純米吟醸 家伝手造り

 

おすすめの温度帯:人肌燗(35℃)

中口で米の旨味を感じられる純米吟醸には、人肌燗がおすすめ。

米の香りと旨味が引き立ち、よりなめらかな口当たりで優しい味わいに。

冷でも燗でも、どちらでも楽しんでいただける一本です。

 

蓬莱 無修正の酒

おすすめの温度帯:ぬる燗(40℃)

純米無濾過原酒の無修正の酒は、冷~ぬる燗がおすすめ。

少し温めることで凝縮された米の旨味がより引き立ち、お米の豊かな香りが口いっぱいに広がります

 

上燗 小町桜

おすすめの温度帯:上燗(45℃)

飛騨で長年愛されている地酒、小町桜。

地元の飲食店でよく熱燗として提供されているのは、主に小町桜です。

冷やでは深いコクを楽しめ、上燗にするとさらに旨みが増す、飲み飽きない飛騨の味です。

蓬莱 蔵元の隠し酒

おすすめの温度帯:熱燗(50℃)

辛口の酒に燗を付けると、よりキレのある味わいに変化しますが、

中でも蔵元の隠し酒は熱燗で驚くほどの変化を見せてくれます。

淡麗すぎるだけじゃない、旨味のある辛口がさらに研ぎ澄まされ、ついつい飲みすぎてしまうほど飲み飽きない酒に。

 

飛び切り燗  蓬莱純米大吟醸 生酛

おすすめの温度帯:飛び切り燗(55℃)

冷で飲まれることが多い純米大吟醸、生酛。

冷では淡麗な味わいと華やかな香りを楽しめますが、飛び切り燗まで温めると文字通り一味違った味わいに。

生酛特有の酸味がより一層引き立ち、湯気と共にフルーティーな香りが口いっぱいに広がります。

 

真宗寺燗 上撰

おすすめの温度帯:真宗寺燗(55~65℃)

古川祭りでは欠かせない酒、上撰。

普段はまろやかな口当たりのこのお酒は、手に持てないほどの熱さにするとその真価を最大限発揮します。

真宗寺燗で飲む上撰は、まさに「飛騨の味」です。

お酒をお猪口に注ぐ様子

7.まとめ

お酒によって向いている温度帯は様々。
しかし、このお酒はこの温度でないといけない!という決まりはありません。

冷やにすれば、引き締まったシャープな味わいに。
お燗にすれは、ふくらみのある、まろやかな味わいに。
同じ日本酒でも、温度によって様々な表情が楽しめます。

是非この記事を参考にしつつ、自分が一番おいしいと感じる温度の組み合わせを探してみてくださいね。

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