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2022.12.12

日本酒の火入れとは?詳しく解説いたします【渡辺酒造店】

瓶燗作業中の蔵人

1.「火入れ」の目的

火入れとは加熱処理のことをいい、①完成したもろみを搾りタンクで貯蔵する前と、②瓶や容器に詰めて出荷する前の、
通常2回行われます。

加熱処理をする目的は、ふたつあります。

ひとつは、日本酒を劣化させる火落ち菌を殺菌するため。
火落ち菌とは、非常に繁殖力・生存力が強い乳酸菌の一種で、アルコール殺菌でも失活しないのが特徴です。
繁殖するとお酒が薄く白濁し、味・風味ともに酒質を劣化させる厄介な存在です。
清掃の甘さや火入れの温度が低かった等の原因で、菌が殺菌されずに蔵内の道具やタンク内で翌年まで生き残ってしまうと、
数年にわたって火落ちした酒になってしまい、中には廃業に追い込まれる
蔵があったほど、恐れられている存在でもあります。

もうひとつは、日本酒の中に残った酵素の働きを止めて、酒質を安定させるためです。
酵素の働きが止まらなければ、どんどん過発酵してしまう為、味わいが成熟しすぎてしまうため、
品質を保つために行います。

パストライザー ベルトコンベアーで流れている瓶

2. 「火入れ」の方法

火入れ方法の図解

 ①プレートヒーター

プレートヒーターは、効率的に大量のお酒を加熱する装置です。

通常2回火入れを行う一般的なお酒は、圧搾機で搾られたもろみを濾過後、プレートヒーターと呼ばれる機械で
瓶詰め前に、蔵の中にて1回目の
火入れを行います。
そして、再度タンクにて瓶詰めを迎えるまで貯蔵されます。

出荷を迎える時期になると、タンクに貯蔵されたお酒(1回加熱処理済)をボトリングする直前に、瓶詰め場の
プレートヒーターで
2回目の火入れを行い、その後瓶詰め処理を行います。

プレートヒーター 作業台を流れる瓶

 

②瓶火入れ

 ・パストライザー

パストライザーも、同じくお酒を加熱処理するための機械です。

瓶詰め後のお酒の火入れ作業に使用されるもので、瓶詰めした後のボトルをベルトコンベアーの
先にある囲いの中で、高温の温水シャワーをかけて火入れをする方法です。
一度に多量のボトルを火入れ・急冷できる装置となっています。

 ・瓶燗

高級酒に関しては、瓶燗火入れと呼ばれる方法で、1回のみの加熱処理をします。
生のまま瓶詰めされたお酒を、水を張った容器にお酒の入った瓶を並べ、そのままお酒の温度が摂氏65度以上になるまで
加熱します。(イメージは、湯煎で加熱するような光景です)
デリケートな高級酒にとって、素早く加熱し急冷することで、味わいの劣化が少なく済む、この方法が用いられます。

酒の温度を上げすぎると風味を損なうので、65℃まで上げてから一気に急冷します。

瓶燗作業中の蔵人 瓶火入れ 急冷中の瓶

火入れの際、温度はとても重要で、少しでも加熱時間が長過ぎたり、温度が上がり過ぎてしまうと日本酒の香味が
失われてしまう為、一瞬たりとも気の抜けない作業なのです。
緊張感を漂わせた蔵人が、付きっきりで温度計とにらめっこをしながら立ち合います。

滝のしぶきとお猪口を持つ手

 

3. まとめ

皆様、火入れ作業に関してご理解いただけましたか?

断然火入れをしていない生酒の方が、風味がよく一般的に好まれがちですが、
気温の高い時期に劣化しやすいデリケートな生酒は、なかなか持ち帰り用や贈答用に用意したい際、
不安を
持つ方も多いですね。

なるべくお酒の美味しさに影響を与えないよう、様々な方法を用いて火入れをしておりますので、
ぜひ皆様も、用途に応じて様々なタイプのお酒を選んでみてくださいね。

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